《たいすけ》の山よもやま話  「パーテイ登山で考えることいろいろ」


      パーテイ登山で考えることいろいろ      

                               岳 遊 子              

□パーテイ登山とは⇒複数の登山者が協力しながら一緒に登山することを言う。即ちリーダ、サブリーダーがいて、メンバーの協力において登山を楽しみ無事に下山る。メンバーが何かの都合でパーテイから離れて行動したときはパーテイとは言わない。また計画の作成、情報収集や共同装備の分担を決めるためにミーテングを行う。

ミーテングは皆で決めた約束事だ。忠実に守りたい。

 


パーテイで考えること


1.メンバーの装備、体調、体力、技術などの程度を考える。


2、プランを考える⇒企画の程度は7分目。日本人は完ぺき主義でタイムスケジュールどうりに登ろうとする。無理にこなそうとするとけがをしたり、事故になるケースが多い。スケジュールは柔軟に考え、そのプランが適切か考える。また決行または中止の条件を事前に打ち合わせておく。


4.人数が少ないメリット⇒コミュニケーションがとりやすい。うまくかみ合えば臨機応変に動ける。


5.人数が少ないデミリッット⇒決定せずにあいまいになりやすい。その場の雰囲気になりやすい。


6.役割分担⇒リーダーは一人で全てを背負わない。メンバー全員が役割を分担する。


7.信頼関係⇒難しい山行、長い山行になればなるほど仲間が大事。命を預けられる相手か。
 信頼関係は出会った瞬間に生まれない。何回か登山をしているうちに生まれてくる。登山を介して生まれる信頼や友情は一生もの。どうしてもその人と合わないと思うなら、あなたが信頼される登山者になればいい。


8.リーダーは道案内ではない。


9.ハイキングと登山の違いa ⇒ハイキングはすぐ救助に来てくれるが、登山はすぐ来てくれない。


10.ハイキングと登山の違いb ⇒行動食はハイキングの時は他人の分を持つが、登山の時は自分の分だけ持つ。


11.ハイキングと登山の違いc ⇒車のガソリン代の計算は、ハイキングは簡単だが登山は複雑。


12.メンバーが無口になったら体調が悪くなったと判断する。


13.共同の作業⇒テントの設営や収納など共同の作業が最優先。個人のザックのパッキンなどは最後にする。共同のゴミを持つと尊敬される。


14.マイペースで歩く⇒無理に前の人のペースに合わせるとバテる。即ち前の人と一緒に歩かない。そして後ろの人と歩くこと。そうすればパーテイはバラバにならない。


15.歩行間隔⇒ガレ場など足場の悪い登山道では万が一転んでしまったときに隣にいる仲間とぶつかって巻き添えにすることがある。そのため、相手の背中で景色が見えないくらい近づかない方が良い。従って1~2m位の間隔をあけ、万が一の事態に備えたい。


16.パーテイでの責任⇒事故はあくまで個人責任だが、家族は心の中ではリーダーやグループの中で一番登山経験がある人が責任があると思っている。


17.装備⇒日本では「万全な装備イコール安全」という考え方が一般的だが、ヨーロッパでは「最小限の装備でスピーデイに登る身軽さが安全につながる」と考えている。


18.登山届と違う行動をとると、救助も困難⇒変更する可能性のあるルートはあらかじめ登山届に書いておき、予定外の場所へは行かないこと。また登山届が未提出だと救助隊はパーテイの行動内容が分からないので捜索方法が決まらず、助ける意欲が半減するという話を聞いたことがある。


19.自身過剰は遭難のもと⇒自分が絶対正しいと思い込むのは遭難の第一歩。正しい判断は複数の選択肢から冷静に導き出すこと。自身過剰だと間違いに気付いても訂正できない

 


□社会人山岳会の特質 (老若混成の場合)
1.歩くペースがつかめにくい。⇒体力差がある。
2.年寄りが若い者に何かと命令する。⇒若者が嫌がる
3、年配者を立てない若者を誹謗する。⇒年配者のいやらしさ
4、助け合う心が養われる。⇒これがパーテイの素晴らしいところ
5、年配者の知識や経験を吸収できる若者が得をする。⇒パーテイの素晴らしいところ
6、話題に年代差がありすぎて愉快になれない。⇒年配者も若者も共通の話題を見つけよう
                     
□まとめ:メンバー全員が計画の全てを熟知する。ミーテングで登山の準備を十分に行えばその登山の半分は成功したと言える。天候などの影響で頂上を踏めなくても事前に備えたことの判断が適格であったなら、その登山は成功であり、「登山の総合力が身に付いたといえるだろう。
 パーテイ登山はドラマである。即ち主役があり、わき役があり、わき役が主役を補佐し、引き立ててドラマを構成している。パーテイではリーダーが主役でメンバーはわき役である。時にはメンバーの方がリーダーより登山の力量が上の時があって、不規則に発言して行動するとパーテイは壊れドラマが成立しなくなる。力量のある貴方は徹底的にわき役になり、主役を引き立てたなら仲間から信望され、「名わき役という主役」になっている。そして素晴らしいドラマが展開する。また下山した時、メンバーの数が登った時と同数であることが必須条件だ。登山はエゴで登り、愛で下りる。              H30.11
(参考資料:「山と渓谷」2015、No.958. ヤマケイ選書「遭難のしかた教えます」)