《たいすけ》の山よもやま話 ビバークってどうやってするの?

   ビバークってどうやってするの           

                                岳 遊 子


ビバークとは、登山やキャンプなどで、緊急時に野営することを指す用語で、不時泊とも言う。理由は何であれ予定通り行動できず思いがけない場所で一夜を明かす羽目になったことを「フォースト・ビバーク(forced bivouac)と言い、一般的に単にビバークと言っている。テント縦走であればザックにテントが入っているし、一般の山行ならツエルトを持っていればそれを使えば良いが、持っていない場合には雨具、ビニールシートなど持っているものを活用して何とか無事に一夜を明かす工夫をするしかない。また当初よりビバークする予定する場合は「フォーカスト・ビバーク(focused bivouac)」と言う。

 

□誤解している人が多いが、ビバークは遭難ではない。計画通りに行かなかっただけだ。不安はつのるが慌てる必要はない。時間はたっぷりある。ストーブやローソクを点ける。人間は火を点けて見つめると心が落ちつくことを覚えておきたい。

 

□ツエルトがない時
・暗くなってからの判断はしたくない⇒判断が鈍りパニックになる
・気候が変化したり、病人がいるとパニックになり、メンバーが勝手な行動を起こしがちになるので、リーダーの指示で行動すること。山の価値観が違うと困る。
・お互いにどんな装備をもっているかを事前に知っておくこと。
・上部から落石などが落ちてこないか確認する
・恐怖心⇒山の中は漆黒の闇で想像以上に真っ暗で不安が募る。ことに有害動物の襲来に恐怖心が湧く。
・あるものをフル活用する⇒・体から熱が奪われないことを工夫する。冷えやすい手先、足先は手袋やソックスを重ね履きする。レインウエアーのフードをかぶる。エマージェンスシートで体をラップする。エマージェンスシートは破れやすいので2枚あるとベター。
・ザックを空にして地面に置き地面からの断熱をする。
・足先はザックの中に入れるも良い。靴のひもを緩め血行をよくする。


□ツエルトがある時
・風雨の影響が少なく、落ち葉の積もった樹林帯を選ぶ⇒落ち葉は天然の断熱材。しかし落ち葉があり平坦な場所で適地に見えても奥はガケに注意。
・水の確保しやすい沢地⇒天候急変で水に浸かる危険あり
・尾根は風が強いのと、コルは風道なので避ける。尾根から下がった平らなところを探す
・沢のボトム即ち沢のツメはガレ場になっている場合が多く、土砂が直撃するので避ける 

・凹凸している地面や傾斜地を避ける。風にさらされる場所は、短時間は大丈夫でも長時間
は低体温症の危険があり、不適地。


□あると快適な装備
・お湯⇒体を温めると落ち着く
・湯たんぽ、ホッカイロ⇒金属製の水筒に湯を入れる。カイロは空気が無いと発熱しないので少しゆとりの空間を作る
・ニット帽、バラグラバ(目出し帽)手袋など⇒首や手首は動脈があるので冷やさない


□その他いろいろ
・天文薄明継続時間⇒太陽が沈んでもすぐに真っ暗にならない。日没から夜空に星が瞬き始める時間をいう。秋には日没後の薄明継続時間が夏より早くなるので、秋のつるべ落としという。8月ごろは19時過ぎまで行動可能なほど明るいが、10月になると17時を過ぎるとすでに暗くなり行動できない。その差約2時間、夏と異なり、あっという間に闇に包まれる。
・予備電池の注意すること⇒電池の不足により古い電池を混ぜて使用すると強制放電で、液漏れや破裂する危険がある。
・最新のヘッドランプ事情⇒近年のヘッドランプは高照度化が進み、各種機能が充実している。かえって作動が複雑で暗闇のなかで困難なことがある。誤作動を起こさないよう事前の訓練が必要。
・ツエルトだけ持ち、ペグを忘れる人も多いので注意する。


□救助要請
 普通の通信手段は携帯電話だが、山岳地帯では電波が通じないエリアがまだまだ多い。もし携帯電話が通じないなら通じる場所さがして救助を要請する。わずかに移動しただけで通じることがある。どうしても通じなければ、メンバーを最寄りの山小屋や山麓などに派遣する。また通りがかりの登山者に依頼して救助を要請するしかない。また救助を要請した後は、むやみにあちこちに電話しないこと。
肝心なときにバッテリーが切れてしまったために、場所が特定できずに救助が遅れ、命を落としてしまったケースもある。予備のバッテリーや乾電池タイプの充電器も装備に加えておきたい。確実な連絡手段を確保しておきたければ、アマチュア無線も持つことだ。 


まとめ
経験、知識、リスクによって、つまり人によって、ビバークすべきタイミングは異なる。許容範囲の山であれば、日没後でもヘッドランプひとつの明かりを頼りに移動できる。しかし、自分の許容度に少しでも感じたら、すぐに決断すべきだ。もし、その決断を後回しにしてしまうと、危険は増していくばかりだ。メンバーの経験の浅い人を基準に早めの決断が必至だ。 H30.12