【山名・コース】 群別岳
【期 間】 2021年5月7日 【天 候】晴れ
【形 態】 A ・ C ・ P ・ 他
【性 別】 男性 5名
【メンバー】 CL吉K、SL佐K、平、竹、他会員外1名
【地点時間】 〔記録者〕 竹
5:50群別川林道終点ゲート→7:15渡渉地点(400m地点)→8:00熊の平(600m)
→8:30群別川左股→11:10南峰直下→12:00群別岳頂上(下山) 13:00南峰直下→14:30熊の平→15:00渡渉地点→林道終点ゲート16:10
【短信・感想】 竹
増毛山地の中枢を成し最高高度をもって聳える「群別岳」は、国道231号線を石狩浜益地区まで走り、群別川沿いの林道を5キロほど進むと施錠ゲートがあって、そこが出発点となった。
私達はここから歩き始め雪解け水で水量がほとばしる、囂々と流れる群別川を左手に見ながら、1時間20分ほど歩いた地点で、沢筋を一本渡渉し群別川とは別れを告げる。
林道から山道にかわり、ほどなく山道も消えて残雪が現れ始め、アイゼンを装着した。
ルートは右寄りのなだらかな稜線上にでて、広い灌木帯の中を歩くと609m地点で「熊の平」に到着した。出発からここまで2時間10分ほどかかったことになる。
ここでようやく増毛山塊の全容が見え始めてきた。
風格のある「群別岳」を中心として左手に「幌天狗」、そして右手には「奥徳富岳」を従えながら、目の前についに見せた眺望。それは天に突き刺さる巨大なピラミット状の姿を有し、美しさと風格を備えていた。
群別岳は近郊の山にあって、いつも鋭い頂を見せて、登頂意欲を掻き立ててくれる山であったが、如何せん孤高の山の如く山道を巡る道はなく、また沢筋を遡行で登頂を望んでも、深い渓谷に阻まれ、撤退を余儀なくされることが常に脳裏をかすめ、百名山を熟すとしても絶対登れない山の一つとして、心に刻み込まれた山だったのである。
「熊の平」から始めて見たその時、頂上は4つの岩塔群に分かれて立ちはだかるように逼り、すざましい圧迫感をもって迫ってくるように見えた。心は揺らいでいた。
会いたい山に会えたからか?
それとも自分では決して登れないという連鎖を断って、今日は登れるかも知れないという自分がいたからであろうか? それは分からない。 分かるのはメラメラと燃え上がる気持ちを抑えられないでいる自分が、そこにいる事だけだった。
チャンスは突如として巡ってきた。
連鎖を断ってくれたのは一本の連絡だった。リーダーから「群別岳に行かないかい」との誘いが、150峰を終えた翌翌日に入り、群別岳との日程の間合いが余りにも近い為、頭は混乱していて即決に迷ったが、これを逃したら二度とチャンスはやってこないと、連れてってもらう事を決意したのだった。
私達は「熊の平」から一旦ルートを北に取り、コル状の平坦地を歩きながら群別川左股へと向かう。ここに到着したのは8時30分であり、出発から約2時間40分の時間を要していた。ここは一本目の水場。雪野原の中、ほんの一部分だけ雪解けによって沢水が流れ出ているところがあり、水分補給をしながら一休みとした。
いよいよここから核心部へと入って行く。
ここから右の稜線上に出て、1079m地点直下をトラバースしながら、1070m北コルの左をまいて尾根に取り付き、群別岳南峰を目指すこととなる。
雪が溶け始めてきた。アイゼンを履いた足はずっぽりと埋まりつつ一歩一歩進めていく。
急登が続いていく。1000m地点に滝状の2本目の水場があった。
ここまでは平さんのラッセル。ここからはトラバース気味の斜面を竹がラッセル。息が苦しい。スタミナが切れかかって足が動かないのだ。弱い心と強い心がいったりきたり。その時うしろの佐Kさんから声がかかった。「何か食ったら!食わなかったら幌尻の時と同じようにバテルぞー」と言われ、餅を一つ食ったら足が動き始めた。
稜線にでて1070mのコル状まで吉Kさんのラッセルと繋ぎ、仰ぎ見ると真っ白なコルの真ん中に一本のみ、木が立っていたのだ。目の前の左側には「幌天狗」が、右手には「奥徳富岳」がどっしりと鎮座していた。素晴らしい光景だった。
南峰直下を右トラバースしながら、岩塔下の平坦地に11時10分に辿り着いた。ここがアタックの最終地点となり、必要のない装備は全て置いてアタックすることとした。持ち物はピッケル・ナップザック(食料と水)のみとした。
いよいよ最後の頂上を攻める段階に入ってきたようだ。長いトラバースだ。今日一番の危険地帯を超えなければ頂上には到達しないのだ。急峻な下部に滑落するとひとたまりもないような深さだ。ピッケルを刺し込みながら一歩一歩足を進めていく。無事コルに着き、もう緊張する登りはなく、あと残された高度は100mほどだ。グイグイと高度を稼いだ。
頂上が近い。胸が熱くなり何かに陶酔している自分がそこにいた。あと数歩だ。
見上げると頂上の白とクンベツダケブルーの空が待っていた。
頂上からは暑寒別岳・浜益岳・奥徳富岳・幌天狗そして黄金山までが見えて、5月の爽やかな風を受けた春の山は、優しく柔らかな雪山の絶景と変わっていた。登頂できました。
チャンスを与えてくれたリーダーそしてメンバーに心から感謝申し上げます。
[ヒヤリハット]
無し