《たいすけ》の「山よもやま話」(2019年12月号会報掲載)

 

山と岳の違い                          

                                つじい泰輔

山名の最後に付く「山」を表す接尾語は羊蹄山をはじめとして「山」が一般的だ。しかし、岳をはじめ峰、森そして丸などが付く山名がある。どこが違うのか、それは自然発生的なもののようだれたらえ。漢字では山の上に丘と書いて「岳」と読み、これは「高くて大きい山」が語源らしい。

一般には先端が尖っていると岳。なだらかだと山と呼ぶ。「大辞泉」で山を調べると「陸地の表面が周囲の土地より高く盛り上がった所」。岳は「ごつごつ高く険しい山」と述べている。また岳は「山脈の中のある一つ一つの頂上部分」を指す場合が多い。山は「裾野から含めた全体」を指す場合が多いようだ。

また、鹿児島の桜島というのは島の名前であり、山そのものではないが、頂上には北岳、中岳、南岳の3つの峰があり、現在盛んに噴火しているのは南岳とのこと。 富士山もまた、その頂上に富士八峰と呼ばれるとんがった部分がある。いちばん高いとんがりが、剣が峰の「峰」で終わっている。白山岳、須志岳以下の5つの峰はすべて「岳」で終わっている。この感覚からいうと、尖がっているのが岳というようだ。アメリカのブリタニカ国際大百科事典によると、約610m(2000フイート)以上の出っ張りを山と定義している。東京の高尾山は標高599mなので山とは呼ばれないことになる。 日本の国土地理院は海抜4,53mの人工の出っ張りである天保山(てんぽうざん。大阪市)は、日本でいちばん低いけれど「山」として地図に載っており、頂上には2等三角点がある独立峰である。札幌の羊が丘展望台は人工の出っ張りだが、この出っ張りは「岳」と呼ばれている。何故ならば「少年よ、大志をい岳」という洒落がある。

日本の高い山ベスト100を見ると1番高い山、富士山(3776m)、51番目は黒部五郎岳(2840m)、100番目の新蛇抜山(2667m)まで、「山」の付いているのが17座、残りの83座が「岳」で、標高の高い山に「岳」が多いかがわかる。また日本で一番低い岳は千葉県の南房総にある伊予ヶ岳(333,6m)で峻立した岩峰で房総のマッターホルンと呼ばれている。2019年9月の台風15号による倒木などの影響で登山禁止になっている。

尚、北海道には岳、山、森、峰など合わせて1383座あるが、そのうち332座が「岳」、936座が「山」で、「山」が圧倒的に多いことがわかる。

因みに北海道の山数の一番多いのは上川支庁の314座、10番目が石狩支庁の90座、最も少ないのは宗谷地方の49座である。

 

□「谷」と「沢」の違い

広辞苑によると「谷」は地表にできた狭くて細長く凹んでいる部分。浸食作用でできた河谷。二つの尾根が交わるくぼんだ所。「沢」は浅く水がたまり、草が生えている湿地。山あいの比較的地小さな渓谷。

イメージでいえば、「谷」は渓谷など、切り立った山脈に切り込んだ鋭い印象を受ける。一方、「沢」は沢のせせらぎのように春ののどかなイメージが湧く。明確な定義はないようだが、地名で区別しているところもある。穂高・乗鞍・木曽皮ラインの中部地区を境にし、東側が「沢」、西側が「谷」と称されている。完全にそうではないが、西側に関しては「沢」の表現が無く、ほとんどが「谷」となっている。明治になるまで日本の文化は西高東低で、西から東に流れても、東から西にはなかなか流れなかったためらしい。そのため西の文化である「谷」の表現が東の地方には散見されるが、東の文化の「沢」は西の方ではほとんど使われていないなしそうだ。われわれの住む北海道では本州のように「谷」と「沢」の使い分けをしていないようだがどうだろうか。

 

参考資料;「日本の山を数えてみた」 武内 正著 ヤマケイ新書                                        2019.12記