山の「○合目」はどうやって決める?

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       山の「〇合目」はどうやって決める?         辻井泰輔


登山道ではよく「〇合目」という表示がみられる。麓から順に「一合目」「二合目」・・・・と数字が増え増えていって十合目が頂上になる。 この「〇合目」という表示は登山道の距離か高さを10分の1刻みにしているのかと思うところだがそうではない。たいていの山では、1合目の距離が長く、数字が大きくなるほど距離が短いが、急勾配になったりするなど、道が険しくなっている。また、山には複数の登山口があるところが多いが、当然ながら、山の形はきれいな円錐形ではないので登山道によって難易度が異なる。つまり、一つの山でも〇合目の標高が違ってくる。

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この「〇合目」という呼び方は、富士登山に始まるといわれている。富士山は昔から信仰の対象で、平安末期から鎌倉時代にかけて修行の場とされ、室町時代以降になって庶民も登るようになった。とはいえ、富士登山は難儀なので、難易度によって「〇合目」と読んだり、合目と合目の間に設けた休憩所の位置を「勺 しやく」で表したりして、登山の目安とした。合目の由来は「富士山の形が穀物を盛ったようなので、穀物をはかる『合』を用いた。或いは「夜の登山で行燈(カンテラ)に使う油が一合無くなった地点を〇合目」とした説がある。また、梵語の「劫 ごう→極めて長い時間の単位」が「合」に変わったという説もある。これは距離よりも所用時間を目安にしている。つまり、「合目」は山の高さでも登山道の距離でもなくて山を登る上での難易度が基準である。確かに灯火に用いた油の量による計測は山の難易度を知るのに都合がよい。麓の一合目から頂上まで十合目の目印をつけていくが、果たして頂上に達したときに油が上手く使い切ったか、不足したか、あるいは余ったかの疑問が残る。過不足の距離を各合目に均等に配分したのだろうか。


 北海道の山にも「〇合目」の付いた山があるが、計測するときカンテラの灯油を使ったのか或いはほかの方法で計測したのか不明なので解る方がいたら教えてほしい。


 合目で面白いのは、福島県磐梯山 1,816m の山頂は五号目であること、往復で十合目にしている。これは有史以前に富士山より高い山だったのに上半分が噴火で飛んでしまって、五合目が頂上になったといわれている。また長野県の恵那山 2,191m の宮前コースには何故かしら二十合目まであるから、必ずしも十合目が山頂とは限らないのだろうか。尚、一合目とは馬から降りて徒歩で始まる地点をいう。信仰の対象になっている山では、神聖な場所に牛馬をいれることを避けた。「馬返し」{駒返し}地点ともいう。


□豆知識;「胸突き八丁」の言葉の由来
もともと富士山登山から発生した言葉。富士山の頂上付近に険しい坂があり、胸を突かれたように息が乱れ、非常に苦しくなる坂が八丁(約 872m)も続くことから。富士山以外の山でもきつい山道や物事に対して、この言葉が使われている。
□故田部井淳子さんは「人生は八合目からが面白い}と言っている。
                                2020,11 月記