【山名・コース】 日高・神威岳(1600m)ニシュオマナイ川コース
【期 間】 2023年9月8日(金)~9日(土) 【天候】晴のち雨
【形 態】 A ・C ・P ・他
【性 別】 男性2名、女性1名
【メンバー】 CL竹K、SL藤T、古T
【地点時間】 (記録者) 会員No.365 竹K
神威山荘出発4:30→高度524m二股6:14→高度650m 6:52
→高度710m二股7:17→高度760m 取り付き点7:39→
高度1300m 10:31
(下山撤退)
高度1300m 10:35→取り付き点12:35→神威山荘着15:30
【短信・感想】 会員No.365 竹K
(9/8) 今回の北海道100名山・日高神威岳は、一度は行って見たいとチャンスを伺っていた山でありました。
問題は林道。何年も前から日高南部森林管理所にTELを入れ、土砂崩れの状況やらゲート開放の確認をしてきたが、今回は全てがOKとの返答があって、待ちかねていた登頂準備が少しずつ始まった。
今回は3名のメンバーで向かう。古T・竹K車は、輪厚PAで8:40分に集合する藤TSLと合流し、一台で登山口である神威山荘に向かうこととなった。
道は浦河町荻伏から、道々348号線を元浦川沿いにひたすら平行に進むと、元浦川林道に入り、全線砂利道23キロ間にゲートも開いていて、安心の道であった。神威山荘が近づいてくると、手前800mくらいの場所で道は二つに分かれ、道の真ん中に看板があり、「左ペテガリ岳」という表示があった。
ここでどちらを取るべきか悩んだが左の方が、道幅が広かったため、それにつられてハンドルを左に切った。
しかしそれは誤りであった。左道に入るとすぐに、道路右側に何台か留まれる広場があり数台の車が停車していた。この場所を過ぎてもう少し走ると、この林道は消え失せてしまっていたのだ。私たちの車はそこから戻り返し、来た分岐の右に入って神威山荘方面に向かう。14時頃、無事小屋に到着。
小屋は20人程、登山者が入れるようであったが、登山者は私たちのチームだけであった。薪ストーブの上に、車のキーと鍵が残されており、きっと忘れ物に違いないと気になった。
(9/9) 神威山荘4:30分出発。
まだ明けきらぬ暗闇の中ヘッデンを点け、ニシュオマナイ川に向かって歩き始めた。
無風状態、静穏を感じさせるような空気、そしてこの暗闇の中に入っていく恐怖感は何度繰り返してもなれることはない。
山道はすぐに、一番目渡渉点に到達。
私たちは川の右岸寄りに渡り川筋を走る山道を、高度440m地点で左から流れ込む二股川まで順調に歩を進めていた。
この地点までは地図の通り、沢沿いの道は一本の山道でつながっていた。
440mの二股を過ぎて、一本の山道は微塵にも消え失せ、あるのはただ沢の流れだけになった。沢は左岸・右岸ともにピンテーあるいは岩上にケルンが置かれていたところもあり、それらを探しながらのルートファインディングが始まったが、しかし目印を見落とすと、沢筋のとんでもない藪漕ぎの深みに迷いこまれていくので、藤TSLも神経を使いながら、ルート取りをしながら進んでいく様子が伝わってきた。
524m地点の二股に着いたのは6:14分であった。この二股は左に取り、最後の二股710m地点に向かう。ここは右手の沢を取り、南側に張り出す760m地点の取り付き点に7:40分に到着した。
ここで私たちは沢靴から山靴に変え、標高差840mの頂上を登り通すこととなる。
靴を履き替えた一歩目から、急こう配の尾根は一直線上に突き上げていて、壁にへばりつくように登る高度は、グイグイと上がっていく。その急道には長い笹が被さるように生い茂り、足元がおぼつかない状態が続いていく。
早く登れる筈はなく、予定時間より遅れているなとは感じつつ、そんな中、空は1200mあたりから雨模様に変化しつつあった。厄介な雨だった。
急騰の道はフリクションが効かなくなり笹も雨に濡れて、山靴が滑り始めてきたのである。
高度1300mにくると大粒のドシャブリ雨に変わってきた。
古Tメンバーから、これ以上登っても頂上からは何も見えないぞー、と声がかかった。藤TSLからは下山時の斜面が危ない。増水で沢が渡れなくなる。との意見が出され3人合意で一致。撤退を決意した。
取り付き点に着いたのは7:39分、1300m地点で下山撤退を決断したのは
10:31分、この間約3時間を要していたのである。
この後、苦しい下山が始まったが、取り付き点に到着したのは2時間を経過した12:35分。ここから轟轟となって増水された沢筋を下り、ルートをとりながら、ようやくたどり着いた最初の渡渉点は、川幅が膨れ上がり・深くなりすざましい状態になっていて、3人スクラムでようやく渡り切ることができたのです。
今回の山は、只々平凡な沢を渡り、山頂からの優美なペテガリやソエマツ岳が見れた山行ではありません。それなのに神威山荘に到着したときに湧き上がってきた涙やら、手を握って抱き合った感動と感謝が、心の底から湧き上がってきたのはなんだろうかと、強い衝動に駆られました。
判断が1時間遅れれば、その日に帰って来れなかったと確信しているのです。一人一人の拮抗する力と信頼関係が、チーム全体を守りきれたと脳裏に刻まれた山行でした。引っ張ってくれた藤TSL,真ん中にいて指示してくれた古Tメンバーに心から感謝申し上げます。